研究室紹介

次の日時に研究室紹介します。その他の日時も都合がつけば研究室紹介しますので、お気軽にどうぞ(事前にメールください→ogata(atmark)im.uec.ac.jp)

卒業研究テーマ

2017年度卒業研究は次の研究テーマを考えています。(随時情報を公開していきます)

  • 複素関数論および佐藤超函数論に基づく数値解析

複素関数論は文句なしに面白い。

Cauchyの積分定理により正則関数の周回積分がゼロになったり、留数定理により極や留数を1個2個…と数えて足し合わせれば積分できたりと、全くもってamazingな世界である。

理工系の標準的な数学コースの中で一番面白いのは、やっぱり複素関数論であろう。

その複素関数論、実は数値解析にも応用されている。例えば、複素積分公式で

という形のものを考えたとすると、f(x)が正則関数ならば、右辺の数値積分公式は留数定理により

と表される(Cは積分区間[a,b]を正の向きに一周する曲線)。詳しくは森正武先生の「数値解析 第2版」(共立出版、2002年)をご覧頂くとして、こういう複素積分表示を出発点として、いろんな数値積分公式について理論誤差解析が行われたり、新しい数値積分公式が考え出されたりしている。このように、複素関数論は単に面白いというだけでなく(それでも十分立派だと思うけど)、数値解析において実用に役立っているのである。

一方、佐藤超函数(hyperfunction)は何かというと、物理で現れるデルタ関数δ(x)を数学的に正当化する枠組みとして考え出されたもので、これによると、デルタ関数を始め特異性をもついろいろな関数が複素正則関数の言葉で表されるのである。特異性のある関数は数値計算では扱いにくいけど、複素正則関数は数値的にも扱いやすくから、佐藤超函数を介すれば特異性をもつ関数という厄介者が割りとスムーズに扱えるのである。こうしたことに着目して、最近我々は、佐藤超函数論に基づく数値積分を研究し始めて、これからいろいろな数値解析の分野に拡張しようとしている。

そういうわけで、複素関数論そして佐藤超函数論を応用した数値解析というamazingな研究の世界を、来たる卒研生たちとshareしたいと考えているわけである。

佐藤超函数論に基づく数値解析についてはこのページも御覧ください。

  • 代用電荷法による偏微分方程式の数値解法、および、その応用

代用電荷法は科学技術問題に頻出する偏微分方程式の数値解法の一つで、名前から想像つくとおり、もともとは電気力学から生まれた解法である。

電磁気学で一番最初に習っただろうが、点x0における点電荷(電荷Q)のつくる電位(ポテンシャル)は次で表される。

ここで、は真空の透磁率である。それで、代用電荷法はどういう解法かというと、ある領域において境界に電位を与えておいて内部の電位分布はどうなっているかという問題(数学で言えばLaplace方程式の境界値問題)を考えるとき、その電位をいくつかの点電荷がつくる電位の重ね合わせで近似しようという解法である。数式で書けば、次の形で電位を近似するのである。

そして、境界条件を満たすようにの値を調節するのである。

代用電荷法はこのように単純な解法であるが、状況次第によってはよい精度を達成するのである。具体的には、誤差がO(αN) (αは0<α<1なる定数)と指数関数的減衰するのである。有限要素法や差分法などではここまで高い精度は達成できないから、とてもamazingなことである。そして、代用電荷法は電気の問題ばかりでなく、流体問題、弾性体問題、波動問題など、自然科学の幅広い分野で使えるのである(表向きの現象は異なっていても、現象を記述する方程式が同じならば、一つの解法がいろんな分野に使えるというのが、数学の優れたところである)。

我々はこれまで、この代用電荷法に関して、周期場における流体問題・弾性体問題への拡張、解析関数の近似など、いろんな研究を行ってきた。そして、代用電荷法はこれからもいろんな方面に発展していくと考えている。卒研では、この代用電荷法に関する研究も研究テーマとして用意している。

代用電荷法についてはこのページもご覧ください。

その他、学生さんの希望に応じて、卒研テーマを柔軟に設定したいと思います。